
飲食店のメニュー写真・料理写真は、Uber Eats・食べログ・Instagram・Googleビジネスプロフィールなどの集客に直結します。「プロに頼まないといい写真は撮れない」と思っている方も多いですが、スマートフォンとちょっとしたコツで、十分に集客力のある写真は撮れます。このページでは、飲食店の方が現場ですぐ使えるテクニックをまとめました。
まず、スマートフォンのカメラ設定から始めましょう。料理写真には「フードモード」や「ポートレートモード」がおすすめです。特にポートレートモードで背景をぼかすと、料理がぐっと引き立ちます。HDR機能はオンにしておくと、明るい部分と暗い部分の差が大きい場面でも白飛び・黒つぶれを防いでくれます。
料理写真でいちばん大事なのは「光の向き」です。これさえ覚えれば、写真のクオリティが一段上がります。
窓を背にして料理を手前に置く「逆光」か、窓に対して斜め45度に位置する「斜め逆光」が、料理写真に最も向いています。この向きで撮ると、料理の表面にツヤが生まれて立体感が出ます。スープの湯気、タレの照り、フルーツの透明感など「おいしそう」に見える要素は、ほぼすべてこの光の当たり方から生まれています。
光の角度を変えたいときは、カメラ(スマートフォン)を横に動かすのではなく、お皿の向きを変えるようにしましょう。カメラを動かすと逆光の角度が崩れてしまいます。
逆光だと料理全体が暗くなりすぎる場合は、白いコピー用紙1枚を料理の手前に立てるだけでOKです。これがレフ板の代わりになり、影が自然に和らぎます。100円ショップの白いボードでも十分使えます。
反対に、スマートフォンのフラッシュやカメラ側から光を当てる「順光」は料理写真に向いていません。全体が均一に明るくなりすぎてツヤと立体感が失われ、「証明写真」のような平坦な仕上がりになってしまいます。室内が暗い場合は、フラッシュに頼るのではなく、1,000〜2,000円程度のリングライトや撮影用LEDライトを使うほうが自然な仕上がりになります。
スマートフォンでズームを使わずに料理に近づいて撮ると、広角レンズの影響でお皿や料理の形がゆがんで写ります。これを「広角歪み」といいます。実物より大きく・不自然に見える原因になります。
コツは、ズーム倍率を2〜2.5倍に設定してから、スマートフォン本体を前後に動かして構図を決めることです。ズームを2.5倍より上げるとデジタルズームになり画質が落ちるので、「2.5倍に固定してスマホを動かす」というルールを覚えておきましょう。
料理写真の基本アングルは3種類です。
真俯瞰(真上から)は丼物・スープ・ドリンクに向いていてInstagramにも映えやすいです。45度(斜め上から)はほとんどのメニューに使える万能アングルで、飲食店でいちばんよく使われます。水平(テーブルと同じ高さ)はハンバーガーや断面を見せたい料理のボリューム感を伝えるのに効果的です。
シズル感とは、写真を見た人が「食べたい!」と感じる視覚的な魅力のことです。料理をそのまま撮るだけでなく、以下のちょっとした工夫で大きく変わります。
ラーメンの麺を箸で少し持ち上げる「箸上げ」、パスタをフォークで巻き取る途中の写真など「今まさに食べようとしている」瞬間を演出すると臨場感が出ます。チーズバーガーをカットしてチーズが伸びる断面や、オムライスをスプーンで割って中のライスを見せるなど「おいしさの内側」を見せるのも食欲を刺激します。熱々のスープから湯気が立ち上がる場面や、シロップをかけている瞬間など「動きのある場面」を切り取ると写真に生き生きとした感じが出ます。
片手で箸を持ちながらスマホを操作するのが難しい場合は、スマートフォン用の三脚とセルフタイマーを組み合わせると一人でも撮影できます。料理が冷めると湯気もツヤも消えてしまうので、撮影の準備は料理を出す前に整えておきましょう。
料理の種類によって最も美しく見えるアングルが変わります。
丼・カレー・パスタは真俯瞰(真上)が一番きれいに見えます。具材の色と盛り付けを整えてから撮影しましょう。
ラーメン・スープは真俯瞰か45度が基本です。トッピングが見えるように盛り付けを調整し、湯気が出ているうちに素早く撮影してください。麺の箸上げと組み合わせると臨場感が増します。
ハンバーガー・サンドイッチなど高さのある料理は、水平に近い低いアングルで撮るとボリューム感が伝わります。断面の層が見えるように配置するのがポイントです。
ドリンク・カクテルは透明感と液体の色が魅力なので、逆光で撮ると光が透けてきれいに写ります。グラスの高さを生かした水平アングルが効果的です。
ケーキ・スイーツは断面を見せるなら水平アングル、全体を見せるなら45度が基本です。クリームやフルーツのツヤを出すには逆光か斜め逆光を意識してください。
定食・複数の皿が並ぶメニューは全体を俯瞰で撮り、何が揃っているかを一目で伝えます。配置のバランスを整えてから撮るのがコツです。
食器や背景の選び方も写真の印象を大きく左右します。ソースが飛んだ食器は替えてから撮る、白や木目調の背景はほとんどの料理に合う、事前に盛り付けのリハーサルをしておく、といった点を意識するだけで仕上がりが変わります。
飲食店の電球色照明の下で撮ると、写真全体が黄色っぽくなりがちです。スマートフォンの標準編集機能や無料アプリのSnapseedで「色温度(暖かみ)」を少し青み方向に調整するだけで、料理本来の色が自然に再現されます。Lightroom Mobileの無料プランでプリセットを保存しておけば、毎回同じ仕上がりに統一できて便利です。
「カフェらしい明るくナチュラルな雰囲気」「大衆居酒屋らしい温かみのある雰囲気」「高級感のある落ち着いた雰囲気」など、自分のお店のコンセプトに合ったトーンを決めておくと、写真全体に統一感が生まれます。
撮影前には以下の点を確認・準備しておきましょう。テーブル・食器の汚れや傷がないか確認して清潔な状態にする。背景に映り込む不要なもの(メニュー、スタッフの私物、ゴミ箱など)を排除する。複数の料理を同じシリーズで撮る場合は背景・小道具・ライティングの条件を揃えて統一感を出す。InstagramやGoogleビジネスプロフィールは複数枚を並べて見られるため、全体に統一感があることが重要です。
日中に自然光が入らない店舗や、夜間営業の飲食店では撮影用のLEDビデオライト(リングライトやパネル型)を活用しましょう。1万円台から入手できます。ライトを直接料理に当てると白飛びしやすいので、トレーシングペーパーやディフューザーを挟んで「柔らかい光」にしてください。色温度は昼白色(5500K前後)に設定すると料理の色が自然に仕上がります。

飲食店の写真は「何のために使うか」によって、撮るべき内容が変わります。
Instagram・Xはフォーマットが縦長(4:5)や正方形(1:1)が主流です。料理の魅力的な1枚を中心に、「見た人が来たくなる」雰囲気写真も交えましょう。新メニューや季節限定メニューを投稿するときは、ひとひねりあると拡散されやすくなります。
Googleビジネスプロフィールには外観・店内・メニュー・料理写真をバランスよく揃えておくことが重要です。横長(16:9)の写真が表示されやすいので意識してください。Googleマップから来る新規のお客さんが最初に見る写真になるため、清潔感と雰囲気のわかりやすさが大切です。
食べログ・ぐるなび・ホットペッパーグルメは料理写真の品質がそのまま集客に直結します。代表メニューをすべて撮影しておくことと、外観・内観・個室など店の雰囲気写真を揃えることが基本です。
店内メニュー・QRコードメニューは「どんな料理かわかりやすく伝える」ことが目的です。料理全体が正確に写り、サイズ感が伝わる45度〜俯瞰アングルが向いています。
料理写真だけでなく、店内の雰囲気写真も集客に欠かせません。
撮影前に、コースター・爪楊枝入れ・伝票・不要な食器など余計なものをテーブルから片付けます。店の外観・看板→入口→席→料理と「来店の流れ」を追うように複数枚撮っておくと、来店前のお客さんがイメージをつかみやすくなります。店内写真はお客さんが席に座った高さから撮ると自然な視点になります。営業中は混雑していて撮影しにくいため、開店前の準備時間や閑散時間帯を使うのが現実的です。
スマートフォンのカメラには「グリッド(格子線)」を表示する機能があります。縦横2本ずつの線が交差する「交点」のいずれかにメインの料理を配置すると、自然にバランスのとれた構図になります。料理を中央に置くより、少しずらしたほうが安定感と奥行きが出やすいです。iPhoneは「設定→カメラ→グリッド」、Androidは「カメラアプリ→設定→グリッド表示」でオンにできます。
撮影した写真は専用アプリがなくても、スマートフォンの標準編集機能で十分きれいに仕上げられます。
iPhoneの場合は写真アプリの「編集」から調整できます。明るさで全体の明るさを整え、ブリリアンスで暗い部分を持ち上げつつ白飛びを防ぎ、自然な彩度で色の鮮やかさを自然に上げましょう。電球照明の黄色みが気になる場合は「暖かみ」をマイナス方向に調整してください。
Androidの場合は標準の写真アプリまたはGoogleフォトから調整できます。明るさ・コントラスト・彩度が基本三項目です。まず明るさを整えてから彩度を少し上げると自然に仕上がります。Googleフォトの「自動補正」ボタンを押すだけでもかなりきれいになります。
補正で気をつけてほしいNG操作があります。彩度を上げすぎると食材の色が不自然になります。白飛びを補正しすぎると全体がくすんで見えます。シャープネスをかけすぎると料理がザラザラした質感に見えてしまいます。
外部アプリを使うならSnapseed(無料)やLightroom Mobile(無料プランあり)が機能豊富で使いやすく、プリセットを保存すれば毎回同じ仕上がりに統一できます。
スマートフォンより細かい設定ができる一眼レフ・ミラーレスカメラを使う場合は、以下のポイントが効果的です。
レンズは料理全体のセット感を見せたいなら標準レンズ(50mm・24〜70mmズーム)が万能です。ラーメンやパスタのアップには中望遠〜マクロレンズが向いており、余分な背景が入らず料理が際立ちます。
絞り(F値)はF2〜F4程度に開放して背景をぼかすと料理が浮き上がります。背景に他のテーブルや厨房などが映り込む環境でも、ぼかすことで清潔感のある写真に仕上がります。
露出補正はプラス0.7〜1.3程度に設定するのがおすすめです。カメラの自動露出は白いお皿や明るい環境では暗めに補正しがちなので、少し明るめに撮ることで色が鮮やかになります。
動きのある瞬間を連写でとらえるのも一眼の得意技です。パスタをフォークに巻きつける直前、ラーメンを器に盛る直前、チーズが伸びる瞬間など、「動いている・伸びている」場面は静止した写真より訴求力が高まります。
写真を変えるだけで売上が変わるのか、気になる方も多いと思います。いくつかのデータをご紹介します。
Googleの公式データによると、写真を掲載している店舗はそうでない店舗に比べてウェブサイトへのクリック数が35%多く、電話・ルート検索などのアクションが42%多いとされています(参考:Googleビジネスプロフィール ヘルプ)。
日本政策金融公庫が発行した飲食店向け写真撮影ガイドでは、すでに店内に客が入っている状態でメニュー写真を改善することが、客単価を上げるうえで最もコストパフォーマンスが高いと示されています。
Shopifyの調査では、プロ品質の写真を使った商品は低品質写真の商品に比べてコンバージョン率が平均33%高いという報告もあります(参考:Visual Chaos Studios)。飲食業に直接当てはめることはできませんが、写真の品質が来店・注文の判断に影響するという点は共通しています。
写真を自分で撮る最大のメリットはコストがかからないことです。ただし、セッティング・撮影・編集に慣れるまで時間がかかり、業務の合間に継続するのは思ったより大変と感じる方も多いです。
プロのカメラマンに依頼する場合、フリーランスカメラマンへの1日撮影の目安は5〜15万円程度です(参考:deltaphotoのカメラマン料金ガイド)。
たとえばUber Eatsや出前館のメニュー写真を改善して注文数が30%増えたケースを試算してみます。月間注文100件・平均客単価1,500円の店舗では、月4.5万円の増収になります。10万円の撮影費用は2〜3ヶ月で回収できる計算です。
撮影した写真を2〜3年使い続ければ月割りのコストはさらに小さくなります。リニューアルのタイミングや新メニュー導入時など「ここぞ」という局面では、プロへの依頼も費用対効果の面で十分合理的な選択肢になります。
なお、売上への影響は業種・立地・競合環境によって大きく異なるため、上記の数字はあくまで参考の目安としてご活用ください。
【経歴】 1987年、広島県生まれ。2006年より報道の現場で活動を開始し、政治・社会・経済ニュースの取材撮影に従事。これまでに1万人以上のタレント・著名人を撮影。2014年10月、ビジネス撮影に特化した写真事務所「deltaphoto」を設立。2017年4月、株式会社デルタクリエイティブとして法人化。現在は、これまでの経験をもとに「ビジネスにおける写真の価値」を再定義し、撮影現場のディレクションおよび品質管理に専念。あわせて、同社プラットフォームを通じて「プロフェッショナルの技術」と「ユーザーの想い」を繋ぐ活動に注力している。
【主な撮影・ディレクション実績】(順不同・敬称略)グーグル合同会社 / 三菱商事株式会社 / ボストン・コンサルティング・グループ / 株式会社NTTドコモ / 東京地下鉄株式会社(東京メトロ) / 日本テレビ放送網株式会社 / 株式会社サイバーエージェント / 株式会社集英社 / 株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ / 経済産業省 / 東京大学 / スペイン大使館 ほか多数