
プロのカメラマンに商品写真の撮影を依頼する場合、「事前の準備と情報共有」が仕上がりのクオリティを決めると言っても過言ではありません。撮影当日に「思っていたのと違う」「必要なカットが撮れていなかった」というトラブルは、ほとんどの場合が事前準備の不足から生じています。このガイドでは、依頼前に決めておくべき事項をすべてまとめました。
写真の使われ方によって、カメラマンが意識すべきライティングや構図が大きく変わります。まず「何のために、誰に向けた写真か」を整理することが出発点です。
使用媒体を明確にしましょう。ECサイトのメイン画像、Instagramの広告、紙のカタログ、店頭POPなど、主にどこで使われる写真なのかをカメラマンに共有します。媒体によって最適な縦横比・解像度・背景の方針が変わるため、これが決まらないと他の準備が進みません。
ターゲット層も定義しておきましょう。「20代の美容に関心の高い女性」と「50代の健康志向の男性」では、好まれる光の当て方・影の作り方・背景の選び方が大きく異なります。
「適当にいい感じで何枚か撮ってください」という依頼の仕方は、予算オーバーや撮り漏れの原因になります。以下の種類ごとに、何カット必要かを事前にリストアップしてカメラマンに共有しましょう。
撮影リストが決まったら、撮影順(香盤表)も合わせて用意しておくとカメラマンが当日の流れをイメージしやすくなり、撮影がスムーズに進みます。

「かっこよく」「かわいく」「高級感のある感じで」といった言葉は、人によって解釈が大きく異なります。言葉だけでイメージを伝えるのは難しいため、必ず視覚的なリファレンス(参考画像)を用意してカメラマンに見せましょう。
参考画像の集め方として、Pinterest・Instagram・競合他社のWebサイトなどから、理想に近い写真(光の当たり方・影の濃さ・背景の色など)を数枚ピックアップするのが効果的です。「こういう雰囲気にはしたくない」というNGイメージを1〜2枚添えておくと、カメラマンはより正確に方向性を絞り込めます。
撮影当日に「商品が見つからない」「傷がある商品が混じっていた」というトラブルが起きないよう、以下の準備を撮影前日までに済ませておきましょう。
撮影商品を事前にリストアップして数量・バリエーションを確認します。撮影用にきれいな状態の在庫を取り分けておくことも重要です。指紋・ホコリ・シールの剥がし跡などは撮影前にクリーニングしておきましょう。商品の状態が写真に直接反映されるため、カメラ内でできるだけ美しい状態にしておくことが撮影後の編集時間の節約にもつながります。アパレル商品の場合はシワをアイロンで伸ばしてから撮影に臨みましょう。
白抜き(切り抜き)背景か、質感のある背景(木目・大理石・布など)か、ライフスタイルシーン背景かによって、カメラマンが用意する機材や小道具が変わります。
Amazonなどのモールはメイン画像に白背景を義務づけているルールがあります。使用媒体のガイドラインに沿った背景方針を事前に確認してカメラマンに伝えましょう。なお、背景の選定はプロのカメラマンでも慎重に行う要素のひとつです。背景の豪華さや見た目だけで選ぶと商品との相性が悪く、かえって品質が悪く見える場合があるため、背景選定はカメラマンと相談しながら決めるのがおすすめです。
イメージカットを撮影する場合、商品以外の要素(花・布・食器・植物など)を誰が用意するのかを事前に明確にします。「自社で用意する」のか「カメラマンまたはスタイリストに依頼する」のかによって費用が変わります。スタイリストへの依頼が発生する場合は別途費用が必要になることが多いため、見積もり段階で確認しておきましょう。
スタジオについては、カメラマンの自社スタジオで撮るのか、自然光が入るハウススタジオを別途レンタルするのか、自社オフィスにセットを組んで撮るのかを事前に協議します。スタジオの雰囲気がわかるURLや写真をカメラマンに送っておくと、当日の機材選定の参考になります。
撮影後のトラブルを防ぐために、納品形式を事前に確定しておきましょう。
ファイル形式は特段の指定がなければJPEGが一般的です。切り抜き加工(クリッピングパス)が必要な場合はPSD形式での納品が必要になるケースもあります。データサイズはWeb用(低解像度・軽量)か印刷用(高解像度)かを指定してください。縦横比(正方形・16:9・4:3など)が媒体によって決まっている場合は撮影前に伝えておくと、後からトリミングで対応できない事態を防げます。

商品写真の場合、基本的な色調整・明るさ補正に加えて、追加のレタッチ作業が必要になるケースがあります。
背景の完全な白抜き処理(クリッピングパス)・商品に付着したホコリや傷の除去・影の追加・反射の調整などが代表的な追加レタッチ項目です。これらが基本料金に含まれているか、別途費用が発生するかをカメラマンに事前に確認しておきましょう。レタッチの範囲と費用が明確になると、納期への影響も把握できます。
「いつまでに写真データが必要か」を起点に、撮影日・レタッチ期間・納品日を逆算して設定します。ECサイトのリニューアルや商品発売日に合わせて撮影する場合は、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
撮影後に「やっぱりこのカットも追加したい」という追加撮影が発生すると、納期と費用の両方に影響します。撮影リストの精度を上げることが、スケジュール管理の最善策です。
撮影当日や納品後によく起きるトラブルと、事前に防ぐ対策をまとめます。
「思っていた雰囲気と違った」という問題は、参考画像の共有不足が原因です。文字での説明だけでなく、必ず視覚的なリファレンスを用意しましょう。「必要なカットが足りなかった」という問題は撮影リストの作成不足が原因です。媒体ごとに必要なカットを事前にリストアップすることで防げます。「商品に汚れ・傷が写っていた」という問題は商品の事前準備不足が原因です。撮影前日に商品の状態を確認し、クリーニングしてから撮影に臨みましょう。「追加レタッチで想定外のコストが発生した」という問題はレタッチ範囲の確認不足が原因です。見積もり段階でどこまで対応するかを明確にしておきましょう。
【経歴】 1987年、広島県生まれ。2006年より報道の現場で活動を開始し、政治・社会・経済ニュースの取材撮影に従事。これまでに1万人以上のタレント・著名人を撮影。2014年10月、ビジネス撮影に特化した写真事務所「deltaphoto」を設立。2017年4月、株式会社デルタクリエイティブとして法人化。現在は、これまでの経験をもとに「ビジネスにおける写真の価値」を再定義し、撮影現場のディレクションおよび品質管理に専念。あわせて、同社プラットフォームを通じて「プロフェッショナルの技術」と「ユーザーの想い」を繋ぐ活動に注力している。
【主な撮影・ディレクション実績】(順不同・敬称略)グーグル合同会社 / 三菱商事株式会社 / ボストン・コンサルティング・グループ / 株式会社NTTドコモ / 東京地下鉄株式会社(東京メトロ) / 日本テレビ放送網株式会社 / 株式会社サイバーエージェント / 株式会社集英社 / 株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ / 経済産業省 / 東京大学 / スペイン大使館 ほか多数